「イライラが止まらない!冷えがつらい…漢方が改善できる女性特有の5つの悩み(後編)」

前編では女性ならではの悩みに効く漢方薬を2種類ご紹介致しました。
後編となる今回は引き続き、残りの3種類の症状について効果のある漢方薬ご紹介をしていきます。

是非、前回の記事と合わせてお読み頂ければと思います。

「生理サイクルが整わない」「痛みが強すぎる」月経異常に適した漢方薬

生理に関するトラブルを何も抱えていないという女性の方が少ないのではないでしょうか。周期が整わない「月経不順」、痛みが強すぎる「月経困難症」、経血が多すぎる「肩月経」、PMSの名で広く知られるようになってきた「月経前緊張症」といったように、生理にまつわる異状やトラブルは何かと女性につきものです。

漢方では血流の悪化(瘀血)から起こると考えられ、「瘀血」を改善する漢方薬を症状によって処方し分けています。以下で紹介するもののほか、これまでに紹介した「加味逍遙散(かみしょうようさん)」「桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)」も用いられることが多い漢方薬です。

1. 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
「産婦人科の三大漢方薬」の残りのひとつ。「血」の不足を補い、巡りを良くすることで体を温める作用を持つ漢方薬です。痩せていて顔色が悪い、体力がない人に適しています。冷えの改善にも使われる漢方薬です。

2. 五積散(ごしゃくさん)
夏場の冷房に苦しめられる女性は多いですよね。そうした「冷房病」を抱える人によく処方される漢方薬です。足腰が冷えて腰痛を発症している人や、冷えのぼせがある人に適しています。

原因不明のめまいは「水滞」が原因

ふらふらしたり、立ち上がるときにクラっとしたりするような「めまい」の症状にも、漢方薬が処方されます。メニエール病など、病名がはっきりしている場合はそちらの治療を行えばよいのですが、実際には原因がよくわからないものが多いというのがめまいの特徴です。

漢方では、「水」が溜まったり偏ったりしている「水滞」が原因だとみなされることが多いです。同じめまいでも、くらくらする「回転性めまい」や、ふらつくような「浮動性めまい」、立ち上がったときにクラっとくる立ちくらみによって、処方される漢方薬は異なります。

1. 苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)
苓桂朮甘湯は体力がなく、のぼせ気味で神経質な人に適している漢方薬。めまい・ふらつき・立ちくらみのある人に処方されます。その中でも、特に立ちくらみの症状がみられる人に用いられることが多いです。「水」の流れを改善し、無駄な水分を取り去る作用を持つ「茯苓」がメインの生薬です。

2. 真武湯(しんぶとう)
真武湯は新陳代謝が衰えた虚弱な人に適した漢方薬です。全身に冷えを感じ、めまい感があり、下痢をしやすい人に処方されます。一方で体力のある人には副作用が出る恐れがあるため、適していないとされています。

苦しんでいる人も多い「便秘」には「大黄」を含む漢方薬を処方

排便トラブルは辛いもの。その中でも、女性が抱えがちなトラブルは便秘です。便秘といっても原因はさまざま。大腸の緊張がゆるんでいるために起こる「弛緩性便秘」のほか、反対に大腸のぜんどう運動が強すぎて起こる「けいれん性便秘」、女性の場合はホルモン分泌の変動による血流のうっ滞も原因のひとつとされています。

西洋医学ではこうした原因を客観的に調べる検査方法がないため、生活習慣(食生活など)の改善に加え、漢方薬を用いて治療を行います。西洋医学でも使用されることのある「大黄」という生薬を含む漢方薬の処方が中心です。

1. 大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう)
大黄甘草湯は便秘に用いられる代表的な漢方薬です。「大黄」という便秘によく用いられる漢方と、「甘草」という便秘による腹痛を和らげる作用を持つ生薬が配合されています。体力が中くらい以上の人に適しており、虚弱な人が使うと食欲不振や下痢といった症状が出ることがあります。なお、妊娠中・授乳中の服薬は適していません。

2. 大黄牡丹皮湯(だいおうぼたんびとう)
大黄牡丹皮湯は「瘀血」を改善する作用を持つ漢方薬です。「瘀血」を抱えていることの多い女性によく処方されます。便秘に加え、月経不順や月経困難などにも処方される薬です。体力がある人に適し、右下腹部に張りや押すと痛みがあるような人に多く用いられます。
なお、子宮収縮を引き起こすことがあるため、妊娠中の使用には適しません。

原因不明な女性の悩みにこそ漢方薬が期待できる

女性が抱えるトラブルや悩みには、病名や原因がわからず、単に「体質の問題」とされてしまうものも多いです。そうした西洋医学では「治療ができない」とされているもの症状には、漢方薬の服薬は改善が期待できるものもたくさんあるのです。

西洋医学の薬とは違い、効果がゆるやかな漢方薬ですが、ご紹介した通り、ひとつの症状に対して処方されるものはさまざま。漢方の服薬をする際は、まず一度病院で診断を受けてから適したものを処方してもらいましょう。